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『安保法案 テレビニュースはどう伝えたか検証・政治権力とテレビメディア』
放送を語る会、解説・鎌田慧、かもがわブックレット201.2016. 本体¥600.

 報道メディアに対する政権からの圧力がいよいよ度を超えている。それに対して市民・学生・専門家などの闘いも、安保法制の強行採決以後、安保法制違憲訴訟などの形もとり、多面的に続いている。個々の市民や学者が街頭へでている特徴が、日本社会の民主主義の深化を現している。本書は、安保法案をテレビがどう報道したかを、「放送を語る会」がモニターしたまとめである。2015年5月の閣議決定から9月のいわゆる強行採決までの5カ月間、NHK、日本テレビ、テレビ朝日、TBS、フジのテレビニュースをこの会のメンバーが分担して一旦記録し、報道日時、放映時間など、定量的に分析した。モニターの意図は、視聴者が情報受容を受け身・鵜呑みではなく批判的に捉える能力を持つこと、批評を浅い印象に留めず根拠(証拠)をもつこと、を目指した、とある。5章構成の「もくじ」を挙げておく。全64頁。 はじめに/1、国会審議期間中の対象ニュース番組全体の傾向/2、ニュース番組は法案の問題点や政府・与党の動きにどう向き合ったか/3、法案に関連する重要事項について、独自の取材による調査報道はあったか/4、市民の反対運動が、その規模に応じて適切に紹介されていたか/5、今後、「安保法制下」のニュースに望むこと/表現者の連帯のために 鎌田慧。

 本文に、「モニターで浮かび上がった最大の問題は、NHK政治報道の政府寄りの偏向である。…「政府広報」と批判されてもやむを得ない域に達していた。」とある。たしかに、放送時間の数値など、データの定量性ゆえに、それは歴然で、かつ、多くの人に事実を減衰させずに伝播することができる。協働の闘いにとって大いに知的武器となる。

 「放送を語る会」の活動として、このような番組モニター作業をすでに17回行っており、分析結果をHPに掲載、とある(HPは会の名称でweb検索可)。同様な批判的試みを他の団体でも取り組めるようにと、定型のモニター用記録用紙も掲載ある。最新モニターは18回目でテーマは16年参院選。1989年来の活動の蓄積をご覧いただきたい。とりわけ、HP内の「談話室」の頁には、メンバーによる報道に関するエッセイが11年から月1回のペースでつづられ、活動や時代の経緯をたどるのに大いに参考になる。放映に際し、NHK側が事前に政府に番組を説明に出向き、その結果、番組内容が大きく変更させられた過去の経緯もある(裁判もなされた)。また最近、番組のニュースキャスターが次々に交替している。教育基本法、秘密保護法、安保法制、これからも、共謀罪、改憲と、流れを追跡すると、キャスター交替も番組改変も、戦後政治の枠組みを根底から崩そうとする政権の意図による報道への介入であることが明らかである。まさに、日本社会の、とりわけ国民主権、民主主義にかかわる攻防である。一方、公共放送に本来の権力監視機能を果たさせるのは、市民との信頼・支援の関係であることが、BBCとの比較などから痛感させられる。

 現在、「放送を語る会」のような、NHKを本来の公共放送として市民が取り戻すための活動団体が全国に24ヵ所ある。単位は県や都市や島など。多くはHPやブログを設定し、団体間にMLが設置され活動や情報を交流している。各団体は対等平等で、日常は各地で独自の活動を進め、適宜、共同行動を行う(渋谷のNHK放送センター前での集会やデモ・パレード、院内集会、全国統一署名、各地での同時統一行動など)。岡山でも16年に、「NHK問題を考える岡山の会」を立ち上げた。読者の近隣でも、活動の立ち上げられることを希望する。(S)

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